2023

ミシマ社/西尾晃一さん

プロフィール


西尾晃一(株式会社ミシマ社

住んでいる地域:東京都世田谷区
出身地:千葉県袖ヶ浦市
趣味:Googleマップを見ながら、歩いたりバスに乗ったりすること!
尊敬する人:柳田國男さん(民俗学者)

好きな食べ物:カレーライス
好きな映画:海街ダイアリー
休日の過ごし方:基本、平日デスクワークなので、なるべく外でて、歩くようにしています!

活動紹介


始めた時期

2022年4月入社

きっかけ

血の通った「経済」を現実的にできる環境だと思ったから。

活動に対する思い

本が売れない時代だからこそ、届け方にクリエイティビティが求められている気がします。工夫の時代を楽しみたい、そんな思いです!

大変だと感じること

特になし

過去最大のピンチ

毎日がピンチの連続です、としかいえないほど、日々あたふたしています(笑)

今後の目標

書店員さんとより濃くつながって、豊かな人間関係を気づいていきたいです。

私の好きな本


ぽんこさんの暮らしのはてな

ウルバノヴィチ香苗
ミシマ社(2022年) ¥1,980

自分の身の回りにあるものを理解したい。そんな素朴な悩みに応えてくれる一冊。「電子レンジで物が温まるのはなぜ?」「クエン酸や重層で汚れが落ちるのはなぜ?」説明書では面白さがわからないものも、この本に任せれば一網打尽! 掃除も10倍くらい面白くなります。

マツタケ

アナ・チン(著) 赤嶺淳(訳)
みすず書房(2019年) ¥4,950

オレゴン州(米国)、ラップランド(フィンランド)、雲南省(中国)に生育するマツタケを、現地の狩人たちから聞き取りし、日本の市場に輸入され売買されるまでを辿った、壮大な民族誌! ゴリゴリの人文書でありながら、童話作家のような視点を併せ持つ、視点そのものも気に入ってます。私はこの本に憧れ、東京湾の海苔を卒論の研究対象に選びました。

リリアン

岸政彦(著)
新潮社(2021年) ¥1,815

街外れで暮らすジャズベーシストの男と、場末の飲み屋で知り合った年上の女の、哀感あふれる都市小説。設定もさることながら、小刻み良い文体もこの本の魅力のひとつです。物語に大きな展開はなく、繰り広げられる恋愛も大人でありながら自然消滅するような、頼りなく情けない話ではあるのですが、会話のラリーと大阪の寂れた街の感じが絶妙で、最高に美しいです。「自由で孤独で、やっぱり寂しい」主人公の台詞のひとつひとつが身に染みます。

今日の芸術―時代を創造するものは誰か

岡本太郎(著)
光文社文庫(2022年) ¥748

「絵画の石器時代は終わった。新しい芸術は岡本太郎から始まる。」「芸術は、爆発だ!」かの名台詞を残した岡本太郎はこのような強い言葉が取り上げられがちですが、『今日の芸術』は非常に論理的に、芸術を理解できる、隠れた名著です。素人にはただの一本線には思える、絵画のひとつひとつのタッチが、こんな想いで、こんな気持ちで、向き合っていたのかと、目から鱗でした。絵画をどうみればいい? そんな疑問を持ったことのある全ての人に贈りたい一冊です。問いそのものが大きく覆されるのですが・・・。

映画を撮りながら考えたこと

是枝裕和 (著)
ミシマ社(2016年) ¥2,640

是枝監督の新人時代から『海街ダイアリー』までの全作品を振り返り、表現方法や技術、困難、可能性を探った一冊。時系列順に書籍は編集されており、一見、テーマ性の異なる作品が脈々と続いているように思えるのですが、この本を順に読むと、是枝監督の、問題意識は全てつながっているんだなと思えます。でも自分の人生振り返ってみてもそうだと思うのです。その時その時は、行き当たりばったりの問題意識のもと、生きていても、振り返ると、繋がっていたんだな、と。そんなことに気づかせてくれた一冊です。

断片的なるものの社会学

岸政彦(著)
朝日出版社(2015年) ¥1,716

あるテーマをもとに、論を組み立て、文章を展開する。それが学者の仕事だと、著者の岸さんはおっしゃいます。ですが、この『断片的なるものの社会学』はその論から、こぼれ落ちた断片ばかりを拾い集めた一冊です。メインの論旨とは異なるところに、こんな詩的でこんな文学的な美しいカケラがあるのかと、人生の尊さについて、改めて考えてしまう一冊です。

百年の孤独

ガブリエル ガルシア=マルケス(著)鼓 直 (訳)
新潮社(2006年) ¥3,080

地名や人名などの膨大なディテール、中南米特有の湿気のある文体、複雑に分岐する迷路のような物語。この本のおもしろさに気づけるような大人にいつかなりたい、そんな願いをもつ、ラスボス的一冊!!

MONKEY Vol.6 音楽の聞こえる話

柴田元幸 (編集) 
スイッチパブリッシング 【絶版】

翻訳家・柴田元幸さんが編集長を務める文芸誌。毎号毎号、面白いのですが、1番のおすすめは小沢健二さんの「赤い山から銀貨が出てくる」(p.94)です。欧米の楽器とアフリカや中南米の楽器の音の精巧さはなぜこんなにも違うのか? (注:美しさの優劣ではありません)という問いから、ボリビア・ポトシ銀山での奴隷貿易の話や、アダムスミスの『国富論』まで引用し、その問いに真正面から向き合う、文章は正直、すごすぎます。随筆のように読みやすいながら、論文のような重厚感もある稀有な論考です。私はこの文章に大きく影響され、実際、ボリビア・ポトシまで行ってしまいました。それくらい、「ヤバい」本です。

文にあたる

牟田都子(著)
亜紀書房(2022年) ¥1,760

著者である牟田都子さんは、書籍の校正者さん。第一線で活躍される方の、仕事への向き合い方にはただただ脱帽です。「自分の記憶ほどあてにならないものはないと思っている」(p.19)とか、「自分自身、この仕事に向いていると思ったことはありません。何しろせっかちだしそそっかしい。校正者に求められるであろう資質とは正反対の性格です」(p.127)だとか。本当の意味で低姿勢に仕事と向き合うとはこういうことを言うのか、と。ミスばかりしてしまい自分にとっては、とっておきの一冊でした。

酵母パン 宗像堂

写真/伊藤徹也  文/村岡俊也
小学館(2017年) ¥2,420

沖縄にある「酵母パン 宗像堂」のビジュアルブック。「発酵」、「成形」、「焼き」。それぞれの過程がとても愛おしいです。「読んでみて」としかいえないのですが、どんな画集よりも、伸び伸びした生地を見ているほうが個人的には癒されます。読んでみて。