不定期更新 【ぱらりと一冊】
『 「サーキュラースカートってな、型紙がまあるく円になってるねん。フレアが大きくて贅沢なスカートやねんで」
得意そうに、これにしよう、と母は言った。説明しながら、母も縫うのが楽しみになっているみたいだった。
(中略)
くるっとまわった。
「ほんまに、まんまるや!」
ふわーっと、お花みたいに大きく広がる裾。風が中に入ってくる。わたしは何回もまわった。地味な色のスカートなのに、心の中はバレリーナのような気持ち。一瞬で素敵な女の子になった気がした。足もとが宙に浮かぶような。あの時の嬉しさは忘れられない。』
「いとしい服」
おーなり 由子 (著)
発行: 大和書房
#libreriapunto
#本屋プント
プントのデザイナーに新しい名刺を作ってもらいました🙌 若干騙し絵っぽいとこも含め、気に入ってます。
「片面を本みたいな見た目にして欲しいというリクエストに応えたデザイン。これが簡単そうでとても難しい。二つの角だけ5mmの角丸加工をすることでどうにかそれっぽくなった。アルファベットにも和文書体を使用し、必要以上に幅が狭いフォントを選び、文字もロゴも全てセンター合わせなど、いろいろとセオリー無視してるけど良いデザインだと思います。」
プントではロゴやパンフ、HP等、デザインのご依頼もお受けしております。ヒゲ生えてるほうがデザイナーですので、お気軽にご相談くださいー。 #libreriapunto #本屋プント
Diseñando tarjeta de negocio.
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『おいしくない、とはさすがに言われなかった。けれども、二口ほど食べたところで聖司は、
−これ、何の料理?
と訊いてきた。ロバプン、と言ってもたぶんわからない。それで、台湾風の豚肉煮込みごはん、と桃嘉は告げる。そうか、と聖司は口の片端をかすかに上げて笑う。桃嘉はちょっとクセが強かったかな?とおそるおそるたずねる。聖司は、こういうの日本人の口には合わないよ、と苦笑いしながら箸を置く。あとは桃嘉が食べてよ、俺は鯖缶でも開けるから、と言ってから、こういうものよりもふつうの料理のほうが俺は好きなんだよね、と言った。
ふつうの料理。その一言がなければ、桃嘉は魯肉飯をもう一度つくったかもしれない。(中略)けれども桃嘉にとっての魯肉飯はふつうの料理以上に思い入れがあるものなのだ。』
「魯肉飯のさえずり」
温 又柔 (著)
発行: 中央公論新社
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『 緑の麴菌だけが降りてくるのは空気が澄んできれいなときだけなのだが、そんなときは一年に一~二日訪れるかどうかである。
(中略)
たとえば灰色のカビが降りてくるのは八月のお盆休みの頃である。どうやらこれは大勢の来客によって増える車の排気ガスが原因のようだ。
また黒いカビが降りてくるのは農薬の空中散布のあとである。この地域に広がる田んぼでは夏に二回ほど、ヘリコプターでの農薬散布が行われる。それまでせっかくきれいな緑の麴菌が降りてきていても、空中散布後十日間ほどは黒カビが降りてくるようになる。
一見空気がきれいに見える里山でも、実際にはさまざまな化学物質が存在している。そうすると大気中にはその汚染状態に応じたカビが増える。』
「菌の声を聴け」
渡邉格・麻里子(著)
発行: ミシマ社
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『 私は四歳ごろに目の炎症を治すための手術を受け、光とさよならした。
(中略)
缶詰なら缶の形である程度見当がつくし、レトルトは中身がコロコロと手に触れれば少なくともひき肉物ではないと分かるが、それはほんの一部で、後は「出たとこ隣負」。何に当たっても何かしらの料理になるように周辺の具材と調味料を用意しておき、「きょうはトマトスープが食べたいんです。このサバ缶が、どうか味噌煮じゃなくてトマト煮込みでありますように」と天の神様に念を送ってから開ける。
(中略)
それが、スマホのスキャン機能で食品パッケージを読めるようになったことで一変した。』
「わたしのeyePhone」
三宮 麻由子 (著)
発行: 早川書房
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